カセットテープ

 プロジェクトDの遠征は、まず高橋邸への集合から始まる。
 今週からはついに、神奈川遠征。メンバーたちは集合時間よりずいぶん早く集まっていた。
 そんな中、機材を積み込む史浩たちを差し置いて、ダブルエースはというと。

「はい、啓介さん」
「おー。今日のは何?」

 最初は拓海に対してツンケンしていた啓介も、プロジェクトのメンバーと馴染めなかった拓海も、ここまで激戦を潜り抜ければ自然と打ち解けていた。しかしそれにしたってダブルエースの仲の良さは、群を抜いている。
 今日も今日とて、二人で楽しそうにカセットテープを交換していた。

「井上陽水です」
「ああっ!?」
「もう俺の持ってるのはネタ切れなんで、オヤジの」
「おいおいおい、神奈川までずっと陽水聴いてろってか」
「や、いいですよ、陽水」

 聞こえてくる会話に、史浩たちは苦笑した。
 いつから始まったのかはわからないが、ダブルエースは遠征のたび、自分のお気に入りのカセットテープを交換して移動中に聴いているらしい。
 他のスタッフたちはバンに何人かで乗り込むから会話もあるが、ドライバーの二人は自分のクルマに一人で乗っての長距離移動なので、そうやって暇を潰しているのだそうだ。

「知ってる曲多いから、たぶん口ずさめますよ」
「ほんとかよー。俺あんまり知らねえと思うけどなー」
「そう言う啓介さんは、今日は何なんですか?」
「俺はコレ」

 啓介が渡したカセットテープを受け取り、拓海がラベルの文字を読む。

「……懐かしアニメソング集?」
「そーそー。宇宙戦艦ヤマトとか、ガンダムとか」
「えええーーっ!! なんすかそれ! ウケ狙いっすか!?」
「バッカ、それ超テンション上がんだぞ」

 大笑いしながら二人がバシバシ叩きあっている。
 なんだか割り込みにくいなあと史浩が見守っていると、涼介がずかずかと二人のもとへ近寄った。

「準備できたぞ。さっさとクルマに乗れ」
「「はーい」」

 これから厳しいバトルになるというのに、このリラックスムードは何なんだ。
 まるで仲の良い三兄弟だなあと思いながら、史浩はほっこり微笑んだ。


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彼らのクルマはカセットで正しいのか?


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